喜多川歌麿
針仕事
- 寛政6、7年(1794、95)頃
大判錦絵3枚続のうち左
針仕事をする女性に子供を加え、町人の日常生活を描いた三枚続の左図。薄布の透ける表現、淡い色調に艶墨と紅の効果的な配色が見どころ。黄潰しの背景に人物と小道具を巧みな構図で配し、一図だけでも十分見ごたえのある作品となっている。なお、歌麿の続物では、清長の影響を受けた群像表現から、本図のような、個々の人物を大きく扱いその動きに主眼をおくという、構図?画風の変遷がみられる。 喜多川歌麿は、背景を雲母摺した大首絵で時代の寵児となった、寛政期(1789~1801)を代表する美人画家。女性のふとした表情やしぐさをとらえ、その心情まで鋭く描出する表現が人気を呼ぶ。遊女のほか、市井の生活に取材した作品も描いた。