正しいスキンケアの順番は?朝夜でスキンケアを変えるべき理由を解説

健康?医療
髙木 豊 鹿毛 まどか

近年は同じ化粧水でもさまざまな製品が登場しており、国内だけでなくアメリカや韓国といった美容大国のアイテムも次々に流入しています。

美容雑誌を見たり、SNSでインフルエンサーが紹介しているアイテムを試してみたりと、自分に合うスキンケアの方法が分からず、正しいスキンケアの順番は?朝と夜でそれぞれ必要なスキンケアは?と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

基本的に朝と夜でスキンケアの順番はかわらないですが、必要なアイテムが異なります。また、人によっても朝と夜でそれぞれのスキンケアに使うアイテムが違い、夜はリラックスしながら時間をかけてお肌をケアできても、忙しい朝はパパっと済ませてメイクをする、そんな人もいるでしょう。

今回はそんなスキンケアに関して一度原点に立ち返り、正しいスキンケアの順番や重要性についてご紹介します。

何気なくこなしてしまいがちなスキンケアですが、皮膚の健康を保つために重要な工程であることは間違いありません。

日々のスキンケアを見直すことで、トラブルの起こりにくい肌を目指せるでしょう。

皮膚の構造と役割とは?

私たちの身体は、さまざまな外部刺激にさらされていますが、全身、ほぼすべての場所に皮膚が存在しているからこそ、私たちは紫外線や摩擦などの刺激によるトラブルを起こさずにいられるのです。

まずはそんな皮膚がどのような構造で成り立っているのか、またそれぞれの層はどのような働きをしているのかご紹介します。

意識せずともそこにある皮膚ですが、実は私たちが健康に生きる上では欠かせない存在であると覚えておきましょう。

皮膚の構造

皮膚も人間の臓器の一種として考えられているため、いわば「目で見たり、触ったりすることのできるもっとも身近な臓器」といって良いでしょう。

すべての皮膚を一面に広げると、成人の場合でおよそ畳一畳分くらいになり、体重の7から8%を占めるといわれています。

表皮、真皮、皮下組織と3種類の組織から成り、厚さは体の部位によって異なりますが、私たちの目に見えている「表皮」はたった0.2mmと薄く、その下に真皮や皮下組織が存在しています。

一言で表皮といってもその中身は4種類の層に分かれています。一番外側の「角質層」が高いバリア機能を有し外界から体を守る重要な働きをしており、普段使っている化粧水や乳液が浸透するのもこの組織です。

表皮の下に位置する真皮は皮膚の大部分を占める柔軟でかつ強固な組織で、表皮を支え、毛細血管、リンパ管、そして様々な神経終末を含むと共に毛根や皮脂腺?汗腺などが存在しています。

近年人気が高まっている医療脱毛などでは、毛根に存在する毛乳頭をレーザー光等による熱で破壊することで毛の生成を防ぐ目的の機械もたくさん登場しています。

さらに奥深くに位置する皮下組織は筋組織や骨の上にあり、動脈や静脈、神経が通っている部位でもあります。

これらの部位はいずれも異なる役割を担っており、どこが欠けても健康的な肌とはいえなくなります。

続いての見出しでは各部位の役割について詳しく見ていきましょう。

皮膚の役割

皮膚の一番外側にある表皮は、主に外部刺激から身体を守る役割を担っています。

表皮が突破されると真皮のみならず体内の組織が危険に晒されてしまうため、バリア機能を高め、健康的な表皮を保つことが重要となります。

表皮はほぼ100%細胞のみで成り立っていますが、その役割は4つの層によってさらに細かく分かれているため、下記の表を見て整理してみましょう。

名称役割
角質層死んで平たく硬い構造をもつ
NMFやセラミドが水分を蓄え、乾燥や外からの異物侵入を防ぐ
顆粒層水分を蓄えるためのNMFやセラミドを生成する
有棘層表皮の大部分を占める
基底層分裂により新たな角化細胞を生み出しターンオーバーを促す
色素細胞がメラニン色素を合成し紫外線から身体を守る

表皮の下にある真皮は皮膚の大部分を占めます。コラーゲンやエラスチンが豊富に存在しており、皮膚組織を構築すると共に肌にハリ感や弾力をもたらし、さらに、毛根やリンパ管?汗腺などを保護しています。

乾燥や加齢によってコラーゲンやエラスチンが不足すると、シワやたるみといった肌トラブルが起こるリスクが高まります。

さらにコラーゲンやエラスチンの間を保水力に優れたヒアルロン酸が埋めることで、内側から膨らむようにハリのある肌を目指せるでしょう。

真皮中の毛根にはすぐそばに皮脂腺があり、摩擦や乾燥などから肌を守るために皮脂を分泌しています。

汗腺はご存じの方も多いように、汗を出して身体の熱を下げており、夏場を乗り切るために重要な働きを担っています。

最後にご紹介する皮下組織は、表皮や真皮を支えるべく柔らかなクッション性を持ち、そのすぐ下に筋肉や骨とその間にある血管や神経などの重要な器官を守る働きを担っているのがポイントです。

関連記事:アスリート?運動をする人が摂るべき栄養素やサプリメントについて解説

スキンケアの重要性

私たちが意識しなくても、さまざまな刺激から身体を守ってくれている皮膚。

そんな皮膚に対してスキンケアがどのような役割を担っているのか、疑問に思ったことのある方も多いのではないでしょうか。

美白やニキビケア?シワの予防などさまざまな目的を持つスキンケアアイテムが登場していますが、そのもっともたる目的は「洗浄」と「保湿」です。

どんなスキンケアアイテムを選ぶべきか迷ったときは、まず保湿力の高いものを選ぶと良いでしょう。

その他の目的はあくまでもプラスアルファであり、保湿がしっかりできていなければその効果を発揮することはできません。

そもそもなぜ保湿をしなければならないかというと、私たちの肌は常に乾燥の危機にさらされているためです。

乾燥しがちな冬場はもちろん、エアコンや紫外線などさまざまな要因で水分が失われてしまいます。

潤いが失われた肌は皮むけや粉ふきが起こったりして、バリア機能が低下しダメージを受けやすくなるだけでなく、ニキビや炎症が起こりやすくなったりしてしまうでしょう。

こういった肌の乾燥状態は、慢性化するとニキビ?シワ?たるみ?シミ?毛穴の目立ちなどさまざまな肌トラブルの元となります。

これを防ぐために、保湿力の高い化粧水や乳液?クリームなどで肌に水分を補給してあげましょう。

水分の多い化粧水などは肌に潤いを与え、油分の多い乳液やクリームは表面に蓋をすることで水分の蒸発を防いでくれます。

適度に潤いを保った肌は、角質層が柔らかく、古くなった細胞が剥がれ落ちやすいというメリットがあります。

これにより肌の内部で新しい細胞が生まれやすくなり、ターンオーバーの正常化に繋がるでしょう。

シミや毛穴の目立ちなどさまざまなトラブルを抱えた肌が新しい細胞へと生まれ変わることで、肌トラブルの軽減も目指せます。

スキンケアの順番は朝と夜で変えるべき?

保湿力の高いスキンケアアイテムを選ぶ大切さは分かったものの、実際にどんな順番で行うべきか知っておきたいところです。

多くの方が起きた後?寝る前の1日2回洗顔を行っていますが、実は朝と夜でスキンケアの役割が異なるのをご存じでしょうか。

それぞれの役割を正しく理解しておくことで、より効率的なスキンケアができるようになります。

朝のスキンケアの役割

朝の洗顔が大切なのは、寝ている間についた埃や古くなった皮脂などを洗い流し、日中の肌トラブルを防ぐためです。

清潔な寝具を使っていても、汗や皮脂は絶えず分泌されているため、汚れが溜まってしまうのは仕方がないことだといえます。

汗をかきにくい冬場であっても皮脂はしっかりと分泌されているため、洗顔を怠らないようにしましょう。

また、夜に行ったスキンケア製品も皮脂と同様、時間が経って酸化されて劣化してしまったりしているので洗い落とすことが必要です。

汚れがついたままの肌にメイクをしても、ファンデーションがよれたり時間の経過とともに崩れたりする可能性が高まります。

洗顔をして清潔な状態を保ち、かつ化粧水などで保湿を行うことで、キメが整いメイクがしやすくなるでしょう。

夜のスキンケアの役割

夜の洗顔は日中溜まった汗や皮脂?埃を落とすとともに、メイクを落として肌を労わるために必要な工程です。

オイルやバーム?クリーム?ジェルなど、自分に合ったクレンジング剤を選び、肌に負担をかけないように洗顔を行います。

洗顔後のスキンケアで重要なのは、寝ている間に肌へ栄養分を補給し、バリア機能を高め健やかな状態を目指すという点です。

保湿メインのスキンケアを選ぶのはもちろん、自分に合った美容液やシートマスクで栄養を補給してあげましょう。

人間は寝ている間に修復を繰り返しているため、修復に必要な栄養素をたっぷりと蓄えた上で睡眠をとるのがおすすめです。

関連記事:生体機能とは?加齢によってどう変化する?応用方法も解説

朝と夜それぞれのスキンケアの順番

朝と夜でスキンケアのもつ役割が異なるということは、すなわち行うスキンケアもそれぞれで違うということです。

朝のスキンケアの順番

朝のスキンケアで基本となる順番は以下の通りです。

  1. 洗顔
  2. 導入美容液
  3. 化粧水
  4. 美容液
  5. 乳液もしくはクリーム
  6. 日焼け止め

導入美容液や美容液の使用は夜のみに留めている方も多いため、使う方のみ参考にしてください。

朝のスキンケアでもっとも重要となるのが「日焼け止め」です。

汚れを落として綺麗になった肌を紫外線から守るためにも、外出時間や場所に合わせたSPF?PA値のものを使いましょう。

日中クリームタイプの日焼け止めを塗り直すのはなかなか難しいため、スプレータイプの製品を持ち歩くのもおすすめです。

また、日焼け止めと化粧下地が一緒になったものも多数登場しているため、UV対策と同時にメイクノリをアップできるのもポイントです。

スキンケアの工程も削減できるため、忙しい朝の時間にピッタリのアイテムといえるでしょう。

夜のスキンケアの順番

夜のスキンケアで基本となる順番は以下の通りです。

  1. クレンジング
  2. 洗顔
  3. 導入美容液
  4. 化粧水
  5. 美容液
  6. 乳液もしくはクリーム

朝のスキンケアから日焼け止めがなくなりクレンジングが加わるくらいで、大きな変更点はありません。

しかし全てのスキンケアを効果的に行うためには、正しいクレンジングが必要不可欠です。メイクなどを落とすときには無意識に肌をこすりがちですので、気を付けて肌をこすらない様にやさしく洗ってあげましょう。

特にオイルやバームタイプのクレンジングは肌になじませた後、水をつけて乳化を行い、皮脂やメイク汚れをしっかりと落としましょう。

アイメイクなどはポイントメイクリムーバーを使い、デリケートな目元に負担がかからないように注意することが大切です。

また、夜に美容液を使う場合は、化粧水で肌に水分を補給した後がおすすめです。水分の行き渡った肌は美容液が浸透しやすく、広範囲にまんべんなくなじませやすいでしょう。

クリームなどは油分で皮膚に膜を作り、水分の漏出などを防ぐ一方、外部からの水分等の浸透を抑制するため、スキンケアの最後に使いましょう。

特に、美白成分など皮膚内に浸透させたい成分を含む美容液などは、クリームの前に使うことが重要です。

スキンケアにパック?シートマスクを取り入れる時は?

主に夜行うスペシャルケアとして、パックやシートマスクを使った経験のある方も多いのではないでしょうか。

肌のためには毎日でも使いたくなってしまいますが、過剰な使用が却って肌にダメージを与えてしまう場合があります。

保湿がメインのシートマスクは毎日使用しても問題がない場合がほとんどですが、美白や毛穴対策などのスペシャルケアは週1回程度に留め、基本となる保湿をメインに行いましょう。

敏感肌の方は頻度をさらに落とし、肌の状態を診ながら使うのが大切です。

多くのパックやシートマスクは、美容液同様に化粧水で肌を整えた後に使用します。

一部の製品は順番が異なる可能性があるため、必ず製品裏面の使用方法を読んでから使いましょう。

乾いてから剥がすタイプのピーリングパックは洗顔後すぐに、つけた状態で睡眠をとるスリーピングパックは乳液やクリームの後に使うのが良いとされています。

主にシートマスクを使う上で注意したいのが、貼れば貼るほど成分が浸透し、肌に良いといった勘違いをしてしまう方が多いことです。

シートマスクには5分から20分ほどと製品によって適切な使用時間があり、この時間を超えて使うことは推奨されていません。

シートマスク本体が乾燥し肌の水分を奪ってしまう可能性があり、乾燥のリスクが上がることを覚えておきましょう。

シートマスクをつけたまま作業をしていて外すのを忘れてしまったり、暑いからといってつけたまま扇風機に当たったりするのも良くありません。

関連記事:BCAA(分岐鎖アミノ酸)の効果とは?EAAとの違いを解説!

健康で美しい肌を目指すために大切なこと

この様に朝も夜もスキンケアは「洗顔」→「保湿(化粧水類)→保湿(クリーム類)」が基本でありその順番は変わりません。しかし、朝には日焼け止めを、夜にはクレンジングをと、スキンケアアイテムが加わります。

肌の健康を保つためには、保湿ケアを重点的に行うのはもちろん、日焼けによるダメージを防いだり栄養バランスの整った食事を心掛けたりとさまざまな工夫が必要です。

好きなことをやる時間を作り、ストレスを溜めない生活を送るのも重要なポイントといえるでしょう。

お通じの悪化は肌に影響を及ぼしやすいため、食物繊維や水分をしっかりと摂り、腸内環境を正常に保つことも大切です。

また、細胞が修復を繰り返したり、新たな細胞が生まれたりするためには、良質な睡眠が必要不可欠です。

たっぷりと睡眠時間を確保するだけでなく、途中で起きたり寝付けなかったりといったトラブルを減らし、朝までぐっすりと眠れるような睡眠を目指しましょう。

締め付けのないパジャマを選んだり、寝る前にスマートフォンを見るのを止めたりするだけでも、睡眠の質がグッと改善されやすくなります。

加えて、どんなに優れた化粧品でも、今あるトラブルを瞬時に治すような力はありません。

だからこそ毎日のスキンケアルーティーンを大切にし、同じケアを長く続けることで、健康な肌を手に入れやすくなるでしょう。

今ある肌トラブルは皮膚科や美容皮膚科へ相談し、適切な処置を受けて改善を目指すことも重要なポイントです。

まとめ

私たちの皮膚は常に外部刺激に晒されており、イメージしている以上にダメージを負いやすい状態です。

まずは水分を補うための保湿ケアを重点的に行い、皮膚の持つバリア機能を高めるところから始めましょう。

汚れや皮脂をしっかりと落とすクレンジング?洗顔はもちろん、紫外線から肌を守るための日焼け止めも欠かせないポイントです。

1日のスキンケアが積み重なることで初めて、私たちの肌は健康な状態を保てるようになります。

自分に合ったスキンケアアイテムを見つけ、できるだけ長く同じ製品を使い続けることが、美肌への第一歩といえるでしょう。

この記事を監修した人

髙木 豊

  • 所属:薬学部 薬科学科
  • 職名:教授
  • 研究分野:ライフサイエンス / 皮膚科学
  • 学位:医学博士 ( 2004年08月 ? 自治医科大学 )

鹿毛 まどか

  • 所属:薬学部 薬科学科
  • 職名:助教
  • 研究キーワード:HA4 ヒアルロン酸 皮膚科学
  • 学位:薬学博士 ( 2013年03月 ? 城西大学 )

関連記事