薬の副作用への理解を深める|対処法を知って安全な服薬を

健康?医療
上田 秀雄

風邪や花粉症をはじめとして、辛い症状を緩和するために不可欠な薬。

さまざまな有効成分が配合されていますが、使い方や個人の体質によっては副作用が現れる可能性もゼロではありません。

本記事では、薬の副作用にはどういった症状が多いのか、万が一副作用が現れた場合の対処法や副作用を防ぐためのポイントをご紹介します。

薬の副作用とは

そもそも薬の副作用とはどういったものか、前提として押さえておきたい基本的な内容を解説しましょう。

副作用の定義とその重要性

薬の副作用とは、本来の治療目的とは異なる望ましくない作用のことを指します。

WHO(世界保健機関)では薬の副作用を「疾病の予防、診断、治療のため、又は身体の機能を正常化するために、人に通常用いられる量で発現する医薬品の有害かつ意図しない反応」と定義しています。

たとえば、風邪薬を服用した後に眠くなったり、湿布薬を貼った後に肌荒れやかゆみ、湿疹などが現れることがあります。

これらは比較的軽度な副作用ですが、中には命に関わるような重篤な症状を引き起こす場合もあるのです。

そのため、薬を安全に服用するためには副作用のリスクを十分理解しておく必要があります。

薬の効果と副作用の関係性

薬はさまざまな症状を緩和する目的で開発されていますが、副作用のリスクをゼロにすることは難しく、メリットとデメリットが表裏一体の関係にあります。

また、個人の体質によっても薬の効果の現れ方が違うように、すべての人に副作用が現れるとも限りません。

薬の副作用が発生するメカニズム

薬の副作用はなぜ発生するのか、基本的なメカニズムについて解説しましょう。

たとえば、風邪薬や花粉症の薬には鼻水やくしゃみを抑える抗ヒスタミンとよばれる成分が配合されており、この成分は鼻の粘膜にあるヒスタミン受容体とよばれる部分に作用します。

しかし、同時に抗ヒスタミンは覚醒作用を抑えるという性質も併せ持っています。

ヒスタミン受容体は鼻粘膜だけでなく全身のあらゆる部分に存在しているため、脳や神経に作用することで眠気をもたらすことがあるのです。

また、上記のような薬の性質だけが原因ではなく、年齢や性別、体格、生活習慣、さらには食事や他の薬との飲み合わせによっても副作用が起こることがあります。

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薬の副作用の種類と分類

一口に薬の副作用といってもさまざまな種類があります。

薬理作用による副作用

薬理作用とは、薬の効果が強く現れたり、ほかの部位に影響を与えたりする副作用です。

風邪薬を服用したときに現れる眠気も薬理作用に分類されます。

アレルギー反応による副作用

アレルギー反応とはその名の通り、免疫系の異常反応によって起こる副作用です。

薬の成分が体内で異物とみなされ、免疫反応が過剰に起こることによってさまざまな症状が現れます。

光線過敏症などの特殊な副作用

その他の特殊な副作用として、薬を服用した後に紫外線を浴びることで発症する光線過敏症などが挙げられます。

時間経過による副作用の分類

副作用は薬の服用後の時間経過によって以下のように分類されます。

服用直後に発生する副作用

副作用の中でも特に重篤なアナフィラキシーショックは、血圧の急激な低下や意識障害を引き起こすこともあります。

薬の服用から30分以内に発生するケースが多いため、特に初めての薬は服用後しばらく様子を見ておきましょう。

数日?数週間後に発生する副作用

薬の服用後、数日から数週間の日数が経過して現れる副作用もあります。

たとえば、蕁麻疹や発疹、赤みなどが代表的です。

比較的軽度の症状が多いですが、時間の経過とともに悪化していくケースもあるため、症状が続く場合には医療機関の受診が必要です。

慢性的に現れる副作用

数ヶ月から数年後に発生し、それ以降慢性的に症状が続く副作用もあります。

たとえば、炎症を抑える効果のあるステロイドは、長期間にわたって服用することで骨粗鬆症を引き起こしたり、副腎機能の低下によって血糖値や血圧の正常な調節ができなくなるリスクがあります。

主要な薬の副作用とその症状

薬の種類によっても副作用の症状は異なります。特に代表的な薬の種類と副作用の一例をご紹介しましょう。

鎮痛剤による副作用

ロキソプロフェンやイブプロフェンといった鎮痛剤は、胃の粘膜を保護する働きを抑制するため胃腸障害が起こりやすくなります。

また、長期間の服用を続けると腎臓に大きな負担がかかり、腎機能の低下を招くこともあります。

【主な症状】

  • 胃痛
  • 胃潰瘍
  • 腎不全
  • 高血圧 など

抗生物質による副作用

一部の抗生物質はアレルギー反応を引き起こしやすく、長期間の服用によって腎機能の低下も招きます。

【主な症状】

  • アナフィラキシーショック
  • 発疹?かゆみ?赤み
  • 腎不全 など

抗がん剤による副作用

抗がん剤は細胞分裂が活発な細胞を攻撃することでがんの進行を抑える働きがあり、毛髪を作り出す毛母細胞や消化器官、骨髄の細胞にもさまざまな影響を与えます。

【主な症状】

  • 脱毛
  • 吐き気
  • 白血球の減少
  • 免疫力の著しい低下 など

抗ヒスタミン剤による副作用

先述の通り、風邪薬や花粉症の薬としてもおなじみの抗ヒスタミン剤はヒスタミン受容体に作用することで眠気などの副作用をもたらします。

【主な症状】

  • 眠気
  • 発疹 など

精神安定剤による副作用

うつ病や適応障害、パニック障害などの治療に用いられる精神安定剤には、脳の神経に作用する働きがあるため、過剰に作用すると以下の副作用が現れます。

また、長期間にわたって服用していると薬が効きづらくなり、服用を中止すると離脱症状が現れることもあります。

【主な症状】

  • 眠気
  • めまい?ふらつき
  • 依存性 など

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薬の副作用の重症度と救済制度

薬にはさまざまな副作用があり、症状やその程度も多岐にわたります。

副作用の重篤度はどのように判断すれば良いのか、もし重篤な症状に陥った場合、どのような救済制度があるのかもご紹介します。

軽度な副作用とその対応

軽度な副作用とは、日常生活に大きな影響を与えない程度の症状を指します。

また、症状が現れるのは一時的で、適切な対処をしたり様子を見ることで、自然と症状は回復していきます。

代表的な症状と対処法は以下の通りです。

症状対処法
眠気服用時間を調整する
口の渇きこまめな水分補給?ガムを噛む
胃の不快感胃薬を併用する
めまい?ふらつきゆっくり立ち上がる?動く

重篤な副作用の定義と対処法

重篤な副作用とは、生命にかかわる可能性があったり、何らかの後遺症が現れる可能性がある症状を指します。

以下の症状が現れた場合には直ちに薬の服用?使用を中止し、服用した薬を持参のうえ医療機関を受診してください。

  • アナフィラキシーショック:意識障害、呼吸困難、血圧の急激な低下
  • スティーブンス?ジョンソン症候群(SJS):皮膚?粘膜のただれ、発熱、倦怠感
  • 間質性肺炎:呼吸困難、息切れ、乾いた咳、発熱、倦怠感
  • 薬物性肝障害:吐き気、倦怠感、黄疸、発熱、発疹
  • 薬剤性腎障害:むくみ、尿量減少、倦怠感

医薬品副作用被害救済制度の概要

「医薬品副作用被害救済制度」とは、薬の副作用によって健康被害が生じた場合、治療費や入院費、年金などの給付を行う制度です。

2023年度は1,016件もの給付が決定しており、処方薬はもちろんのこと市販薬によって生じた副作用も救済の対象となります。

ただし、本制度の対象となるのは、用法?用量を守り正しく薬を使用していたにもかかわらず副作用が現れた場合に限られ、どんな場合でも救済されるというものではありません。

実際に医療費が給付された事例としては、市販薬の鎮痛剤を服用後に重度の発疹が生じ入院?治療を行ったものがあります。

副作用報告の重要性と医薬品副作用被害救済制度の手続き

薬の服用後に何らかの体調不良に見舞われた場合、副作用の可能性が考えられるため、服用していた薬を持参のうえ速やかに医療機関を受診しましょう。

薬による副作用の可能性が高く、治療や入院が必要になった場合には医薬品副作用被害救済制度の給付対象となることもあるため、以下の書類を準備したうえで医薬品医療機器総合機構へ申請します。

  • 医療費?医療手当請求書
  • 医療費?医療手当診断書
  • 医療費?医療手当診断書(皮膚病変用)
  • 投薬証明書
  • 受診証明書
  • 販売証明書(市販薬を薬局で購入した場合)
  • 一般用医薬品服薬状況説明書(市販薬を薬局で購入した場合)

各書類のフォーマットは医薬品医療機器総合機構のWebサイトからダウンロードできます。

また、上記は医療費?医療手当給付のための必要書類ですが、障害年金や遺族年金、葬祭料などの給付にあたっては必要書類も異なります。

薬の副作用を防ぐためのポイント

薬の副作用を防ぐためにはどういったポイントに注意すべきなのでしょうか。

正しい薬の使用方法を順守

誤った方法での薬の服用は副作用のリスクを高める原因になるため、用法?用量を守り正しく服用することが何よりも大切です。

また、飲み薬は水またはぬるま湯と一緒に飲むことが基本であるため、ジュースやアルコールなどと一緒に飲むことは避けましょう。

たとえば、グレープフルーツには一部の薬の効果を強める働きがあるため副作用のリスクが高まります。

副作用の早期発見とモニタリング

副作用が現れているにもかかわらず、それに気づかなかったり放置するケースもあります。

薬を飲み始めてから体調に変化がないかを観察し、皮膚の発疹や息苦しさなどの異常が出たらすぐに医療機関を受診しましょう。

かかりつけ薬剤師への相談?情報共有

薬剤師は薬の専門家であるため、薬に関する些細な疑問や不安があれば相談することができます。

たとえば、薬を購入する際にどんな副作用が現れる可能性があるのかを事前に聞いておくだけでも、体調の変化に気づきやすくなるでしょう。

特に、持病があったり体調を崩しやすく薬を購入する機会が多い方は、気軽に相談できるかかりつけの薬剤師がいると安心です。

おくすり手帳の活用と副作用記録の重要性

おくすり手帳は服用中の薬を把握し、飲み合わせのチェックができることはもちろん、過去に副作用が出た薬を記録しておくこともできるため、副作用を防ぐために有効なツールとなります。

たとえば、「??の薬を飲むと胃が痛くなる」「強い眠気が現れる」などの情報を記録しておくと、医師や薬剤師が適切な対応をしやすくなります。

自己判断での服薬中止のリスク

医療機関を受診すると3日分や1週間分など、まとまった薬を処方されることが多いですが、1?2日程度で症状が改善することもあるでしょう。

このような場合、自己判断で薬をやめるのは危険です。一時的に回復したと感じても、服薬を中止したことで再発?悪化を招くこともあります。

処方された分の薬は最後まで飲みきることを心がけましょう。

関連記事:ジェネリック医薬品はなぜ安い?メリット?デメリットを解説

まとめ

どのような薬であっても副作用のリスクはゼロではなく、薬の飲み方や体質などによって健康被害が生じるおそれがあります。

薬の副作用を防ぐためには正しい使用方法を守ることはもちろんですが、おくすり手帳を活用したり、かかりつけの薬剤師へ相談することも有効です。

また、副作用の症状や程度はさまざまですが、治療や入院が必要となった場合には医薬品副作用被害救済制度によって給付を受けられるかもしれません。

万が一のときのために、公的な救済制度があることはぜひ覚えておきましょう。

この記事を監修した人

上田 秀雄

  • 所属:薬学部薬学科
  • 職名:教授
  • 研究分野:ライフサイエンス / 医療薬学
         ライフサイエンス / 薬系分析、物理化学

学位

  • 博士(薬学) ( 1996年09月 ? 城西大学 )
  • 修士(薬学) ( 1993年03月 ? 城西大学 )

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