応用数学とは?数学を使って社会課題解決

IT?科学
井手 貴範

数学は単なる数字や式の操作に留まらず、社会の課題を解決するための強力な道具にもなり得ます。

そのなかでも「応用数学」は、理論を実社会の問題へ橋渡しする学問として注目されています。

本記事では応用数学の定義をはじめ、活用される分野や具体的な研究課題について解説します。

応用数学とは何か

応用数学とは、自然や社会に現れる問題の数理モデルを構築し、数学とコンピューターを用いて解決する学問です。 

純粋数学は「真理の探究」を目的とするのに対し、応用数学は「真理の探究」に加えて「現実の課題を解決」を強く意識している点に違いがあります。

数理モデルを通して現実の現象を具体化し、問題の理解や最適化をする役割を担っています。

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応用数学が貢献する主要分野

応用数学が活躍する場は非常に広く、現代社会のあらゆる領域に関わっています。

データサイエンス?AI?情報科学

応用数学はAIやビッグデータ解析の理論的な基盤です。

物流の最適化や生成AIの学習、暗号理論、情報セキュリティの強化にいたるまで、重要な役割を果たしています。

医学

医学分野においては、CTやMRIなどの医用画像解析、感染症の数理モデル、ゲノムデータ解析などに応用されています。

新薬の開発やパンデミック対策にも不可欠な学問です。

工学

工学の分野では、自動車の機械構造の設計を最適化したり、新素材開発において応用数学が用いられます。

応用数学を活用することで開発期間の短縮化、軽量化、工場の生産性向上に役だっています。

経済?金融

金融工学やリスク解析は、応用数学の代表例です。

株価の予測や金融商品の設計には確率による数理モデルが構築されており、経済活動の安定化に貢献しています。

応用数学の具体的な研究課題

応用数学は理論だけでなく、現場で直面する具体的な課題にも向き合っています。

逆問題

結果から原因を推定する「逆問題」は、多くの分野で扱われています。

医学ではCTやMRIで得られる画像の再構成に使われ、体内の状態を正確に把握する手助けをしています。

量子コンピュータと応用数学

近年、量子コンピュータの目覚ましい発展により、応用数学の可能性は大きく広がっています。 

数値解析、機械学習、量子情報科学などと連携し、これまで不可能だった大規模な分子レベルの材料科学計算、創薬、暗号解読、複雑な金融市場の予測が現実になろうとしています。

機械学習と応用数学

機械学習の理論的基盤は、現代数学の基礎である微分積分学、線型代数学、確率?統計と応用数学の基礎である数値解析、最適化によって構築されています。

今後AIやデータサイエンスの発展には、これらの数学が欠かせません。

応用数学を学ぶ意義と将来展望

応用数学を学ぶことは、論理的な思考力や抽象化能力、具体的に問題を解決する力を養うことができます。

これらは研究者だけでなく、企業や行政、さらには市民生活においても役立つ力です。

データ社会?AI時代を迎えた今、応用数学の重要性は一層高まり、社会課題の解決により不可欠な存在になると考えられます。

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まとめ

応用数学は、「真理の探究」に加えて「現実の課題を解決」する学問です。

医学、工学、物流、金融といった幅広い分野で活躍し、現代において我々の生活を支える学問でもあります。

これからの時代を生きるうえで、応用数学の理解と活用は欠かせないものとなるでしょう。

この記事を監修した人

井手 貴範

  • 所属:理学部 情報数理学科
  • 職名:教授
  • 研究分野:自然科学一般 / 応用数学 / 統計数学

学位

  • 博士(理学) ( 2004年03月 ? 東京都立大学 )

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